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あきらめ悪い太陽が灰色の雲を透過させ、死にかけた光をようやく届かせている、そんな一日だった。
日曜の午後だ。イスに腰掛けた男がひとり、目の前にいる。公園の隅に落ちていそうな黒縁の眼鏡、干からびた口唇、アイロン皺の目立つシャツが、ぼくは気になる。殺風景な部屋に落ち着かないのか、平凡という言葉に収縮したような男は黙っていた。ぼくと男の間には丸い木製のテーブルだけがあった。男の視線はテーブルの木目を数えているように、ぼくは思えた。紅茶の入った白いカップから湯気が上がっている。男は口をつけようともしない。
気持ち頬杖をつき、ぼくは待っていた。
つまらない直感は的中する。つまらない度合が高いほど、現実へと化ける確率は比例する。それは、ぼくの経験法則だ。おそらく、珍しい話は出てこないだろう。貴重な休日が無価値に流されていく。そんな数十分先の未来を、ぼくは予感していた。
たまりかねたぼくは、テーブルに置かれた小型レコーダの録音ボタンを押し、男をうながす。