寒い冬には自分だけのミニシアターで。

寒い冬には自分だけのミニシアターで。

年の瀬だ。めっきり寒くなった。少し前まで真夏の暑さを過ぎて涼しくなったなと思ったのもつかの間。TシャツにGジャンを羽織るのがちょうどいい温度だと喜んでいたのに、部屋のなかでも靴下を履いていないとフローリングの床が冷たくて冷たくて仕方がない季節になってしまった。早く次の夏が来ないかと待ち遠しくて待ち遠しくて。春まで食料を備蓄して冬眠したい気分でいっぱいだ。

2021/12/22

年の瀬だ。めっきり寒くなった。少し前まで真夏の暑さを過ぎて涼しくなったなと思ったのもつかの間。TシャツにGジャンを羽織るのがちょうどいい温度だと喜んでいたのに、部屋のなかでも靴下を履いていないとフローリングの床が冷たくて冷たくて仕方がない季節になってしまった。早く次の夏が来ないかと待ち遠しくて待ち遠しくて。春まで食料を備蓄して冬眠したい気分でいっぱいだ。
季節とは無関係な話。
近所に京都みなみ会館があって、ときどき上映する映画のチラシをもらってくる。取ってきたのはちょうど上映中のジム・ジャームッシュ一挙12作品と、来年早々に上映されるデビッド・ボウィ『ジギー・スターダスト』誕生50周年記念。ボウィのチラシ、めっちゃかっこいいな。ジム・ジャームッシュは見逃してしまったけど、ジギースターダストは観たいな。ボウィ様は10代に影響を受けたアーティストの代表格だ。おそらく、一生、ボウィ様の幻影は自分のなかに取り憑かれているだろう。
デビッド・ボウィが出演している映画はそのほとんどを観た。『戦場のメリークリスマス』は高校の創立記念日に観た。平日のお昼間だったので席がガラガラだったことを覚えている。エンディングに坂本龍一の曲が流れたときは圧倒的に打ちのめされて、映画音楽の重要性を身をもって体感した。『ハンガー』はボウィが吸血鬼役だなんて似合いすぎだろ、と思いながら観た。『ビギナーズ』も大阪だったかな。『地球に落ちてきた男』は大阪毎日ホールの地下にあった名画座で観た。
上に挙げた作品を観た映画館。今はもうない。すべて潰れてしまった。特に、大毎地下の映画館にはよく通っていた。2本立てで学割を使えば、たしか600円くらいで観られた。しかも、旧作を上映してくれるのは映画好きにはありがたかった。昼食にパンを買い込んで、途中の休憩時間なんかに食べたりしていた。おそろしく時間に余裕があったし、今よりもずっと一日が長かった。
京都市にも名画座があった。祇園会館。上映作品が好みではなかったのでそれほど行かなかったが、それでも消え去ったときには残念な気持ちになった。ミニシアター系の映画館もいくつかあった。『紅いコーリャン』は中国映画のパワフルさを教えてくれたし、『バグダッド・カフェ』は音楽と映像美の融合を教えてくれた。まあ、ものすごい量と質の情報シャワーを映画から受けた。
現在、京都市内にあるミニシアター系は先に挙げた京都みなみ会館、京都シネマ、比較的最近オープンした出町座。それぐらいかな。シネコンは便利だし、座席の心地よさはわるくないけれど、こじんまりしたミニシアターのぬくもりは捨てがたい魅力がある。




たとえば、高校時代に男友達と観に行った内田裕也主演の『水のないプール』と石井聰互監督の『爆裂都市 BURST CITY』の2本立ては古い映画館だったので、カーテンの向こうから漂ってくるトイレの臭いだとか、館内で売ってたバニラモニカの味だとか、硬い座席だとか、そういう五感と映画の印象がセットになって記憶に残っている。


NetflixやAmazonプライムなどの動画配信サービスはとても便利だ。途中でコーヒーが飲みたくなればストップボタンを押せばいいし、続きは次の日に観てもいいし、つまらないと感じたら物語の結末まで早送りしてもいいし、とにかく自由だ。映画館まで足を運んで、閉ざされた空間で、決まった上映時間に映像がスタートして、見始めたら時間が過ぎてくれないとエンディングまで到達できないのは極めて受け身だし、多少の忍耐力が必要な場合もある。
それでも、閉ざされた空間にわざわざ自分の足で出かけて、自分では映像をストップや早送りもできないライブ感は嫌いではない。どちらかといえば、好きだ。あくまで個人的な感想にすぎないけれど、そちらの味わい方を完全に過去のものだと捨てきれない自分がいる。
いつか、いつの日か、シネコンも廃れて、映画館という概念が消滅してしまうときが来るのかもしれない。常にプラットフォームは変遷していくし、時代によって新しい形が発生する。進歩とか、退化とか、よくは分からないが、とにかく映画というジャンルだけは今後も残り続けていって欲しい。
もうすぐクリスマスだ。クリスマスの映画といえば『シザーハンズ』を思い浮かべる。『シザーハンズ』も映画館で観た。クリスマスにはファンタジーがよく似合う。ファンタジーは現実と夢を行き来する物語だから、厳密には『シザーハンズ』はメルヘンに分類したほうがいいのかもしれない。実際、今は処分してしまったけど『シザーハンズ』のDVDを持っていて、この時期には必ず観ていた。


さてさて、あなたはクリスマスにどんな映画を観る?
寒い日にはお家のなかで映画を楽しむのが心地いい。自分だけの部屋は自分だけのミニシアターみたいなものだからね。今年はなにを観ようかな?まだ、なんにも考えていないけれど、せっかくなので、これまで観たことがない別の映画を観ようかな?おすすめの映画があれば教えてください。ラストにスタッフロールが流れているとき、ぼうっと「ああ、いい映画だったな……」と思えるような作品がいいんだよね。
映画って、ニンゲンが生み出した発明品のなかでも素敵すぎる素敵なモノだと思う。

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